私は、全身の毛が抜けてしまう、汎発性脱毛症を患っています。
27歳の時に発症してから約10年。今も全身の毛が無いままです。
発症した当初は今まで経験したことのない、大量の抜け毛に恐怖を感じ、絶望と喪失感に苦しみました。
私の場合は、第一子を出産後、5ヶ月が経過した頃、ちょうど産後脱毛症が出てくる時期に発症しました。
慣れない育児をしながら、どんどん抜けていく髪の毛。
悲しんでばかりはいられませんでしたが、
気がつけば涙が出てしまう程、辛かったです。
脱毛症を治してくれる皮膚科を探したり、インターネットになにかいい情報はないか、夜通し検索するような日々。
高額な育毛剤を買ってみたり、育毛に効くサプリメントを買ったり・・・
期待して、たくさんお金を使いました。
しかし、効果はなく、私はすべての体毛を失いました。
皮膚科での治療も、確立されたものはなく、どれも手探り状態の中治療を受けました。
あるクリニックでは、医師が髪の毛をワシャワシャと、手荒く触って、パラパラと抜けていく髪をみて、
うちでは、無理!とはっきりと断られ、
やっと、治療をしてくれる病院をやっと見つけて、局所麻酔免疫療法を1年近く受けて、効果が現れなかった時、
担当医師に、不機嫌そうな顔で『もしかして、自分で髪の毛抜いたりしてないよね?』と。
抜くわけ無いでしょ・・・
生えてほしくて、頑張って治療してるのに。
腹が立つような、悔しいような、悲しいような・・・
皮膚科での治療は、あまり良い思い出はありませんでした。
第一子の娘が1歳半の頃、自分から仕事したいなという思いが芽生えました。私にとっての大きな一歩でした。
なにより、家族の支え、自然なウィッグとの出会いなどで、少しずつ病気の自分を受け入れる事ができたのです。
しかし、ウィッグを被ったまま働くのは、正直、しんどいです。
それでも、
不自由さを感じながらも、社会生活が送れるようになったことで、ずいぶん気持ちが変わりました。
もう、この全身の毛が抜けてしまった自分を、受け入れた!大丈夫!と
前向きな時もあれば、
不意に悲しくなり、たまに涙が溢れてくる、そんな時もありながら過ごしてきました。
まだ、その頃は、完全には脱毛症になってしまった自分を受け入れられず、苦しんでいたんだと思います。
私は、ウィッグを被るのは好きではありません。頭が蒸れるし、頭痛が起きたり、痒くなるし。
ただウィッグが無いと外出できないと、そう思って被っている部分が大きいのです。
だから、私は家ではウィッグは被っていません。
家族は何も言わず、普通に接してくれるので、唯一脱毛症の私をさらけ出せる場所と思っていました。
しかし、1年程前に、
夫とスーパーに出かけて、家に帰ってウィッグを外そうとしている時に、
「たまには家でもウィッグ被ってよ」と。
夫とは、25歳の時に結婚をして、子供が3人います。
夫は、脱毛症になる前の私と結婚したので、容姿も重要だったのだと思います。
私自身も、容姿が変わってしまってごめんね、という気持ちはありましたが、
そう言われるまでは、
家でウィッグを被っていなくても何も言わない夫に、私は感謝していましたし、安心していました。
この病気になっても、前向きな気持ちを持って生きてこられたのは、病気の自分を受け入れてくれている家族がいたからでした。
夫にそう言われてから、
私は、裏切られたような、切ないような、なんとも言えない気持ちになりました。
夫は、脱毛症の私の姿を見たくない、嫌だと思っていたのかな。
ずっと我慢してたって事なのかな・・・
モヤモヤとした気持ちでいると、
続けて夫は言いました。
「ウィッグは化粧と一緒だよ。いろんな髪型にすぐ変身できるからいいやん。ひかも楽しめばいいよ。」と。
私には、ウィッグでおしゃれを楽しむという感覚があまりありません。
誰かを喜ばせる為にウィッグを被るという、余裕はないのです。
生活をするために、生きていくために、本当は被りたくも無いウィッグを被っています。
本当はウィッグなんて被らずにありのままで、家の中だけじゃなくて、外でもそうして生きていきたい。
私は、夫にわかって欲しくて、たくさん訴えかけました。
わがままかもしれませんが、私はこのスキンヘッドの私を一番受け入れて欲しいのです。
そのためには、自分自身が変わらないといけない。
このスキンヘッドも、個性なんだと。
スキンヘッドの私を、
まず私自身が、好きになろう
と、そう思えるようになりました。
案外、私のスキンヘッドかっこいいやん!
頭の形もまぁまぁキレイ!
こんなに、なんにもお手入れしなくてもツルツルに光ってる!
このまま外でもありのままの姿で生きていけたら、夏とかかなり快適だろうなー
いつか、勇気が出たら、私はそのままの姿で生きていこう!
娘に、「お母さん、いつか勇気が出たらありのままのこの姿で、生きていきたいと思ってるんよ!」と言うと、
すぐに「いいやん!」と言ってくれました。
一緒に歩いてくれる?と聞くと、
当たり前やんと。
夫から、言われた言葉で落ち込みましたが、
娘とのやり取りで、私はかなり救われました。
今までは、ウィッグってばれたくない、隠したい!そんな気持ちで生活していました。
だから、いつもヒヤヒヤしながら外出していました。
でも、ウィッグって気がつかれてもいいじゃない、
その時は、ラッキーと思って、どんどんカミングアウトしていこう!!
そして、徐々に、自分をさらけ出せていけたらいいな。
そう思えるようになりました。
私は、自分の意識が変わった事で、以前より気持ちが楽になりました。
夫の言葉で気がつく事ができたのです。
ある意味感謝です。
この病気とともに仲良く生きていく、私はそう決めました。
脱毛症の方、全てが私のような考えではないですが、
私自身は、病気で髪の毛が無くなってしまった自分を認めて、受け入れてくれることが、一番の治療であり、幸せを感じられる事です。
ウィッグを被るか、被らないかは、自分自身が決めることであって、
被れと言われて被るほど悲しいものはありません。
いつか、夫がその事を理解してくれることを願っています。
そして、いつになるか、わからないけど、スキンヘッドの私で出かけられるといいなぁ。